東京地方裁判所 平成10年(ワ)9489号 判決 1999年9月30日
本訴原告兼反訴被告(以下「原告」という)
株式会社大昌貿易行
右代表者代表取締役
榮智健
右訴訟代理人弁護士
杉浦幸彦
本訴被告兼反訴原告(以下「被告」という)
関浩生
本訴被告兼反訴原告(以下「被告」という)
中井暁妹
右両名訴訟代理人弁護士
井花久守
主文
一 被告らは、原告に対し、各自五八四万三七一三円及びこれに対する平成一〇年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の本訴請求及び被告らの反訴請求を棄却する。
三 訴訟費用は、本訴、反訴を通じ、被告らの負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分につき、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
(本訴)
被告らは、原告に対し、各自六二〇万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(反訴)
1 原告が、平成九年一二月四日、被告らそれぞれに対してした懲戒解雇(以下「本件各懲戒解雇」という)が無効であることを確認する。
2 原告は、平成九年一二月五日以降、被告関浩生(以下「被告関」という)に対し毎月末日限り五二万八〇〇〇円、被告中井暁妹(以下「被告中井」という)に対し毎月末日限り二一万七〇〇〇円を支払え。
第二事案の概要
本件は、(1) 原告が、被告らは、原告の従業員として商品輸入業務に従事中、互いに意思を通じて、原告の輸入先からコミッションを受領し、原告をして輸入先に対し右コミッション相当額を上乗せした代金額を支払わせ、もって、原告に対し、右コミッション相当額の損害を被らせるという不正行為をしたと主張して、被告らを懲戒解雇(本件各懲戒解雇)に付した上、債務不履行又は不法行為に基づき、被告ら各自に対し、右損害の賠償を求めるもの(本訴事件)、及び、(2) 被告らが、原告主張の不正行為の事実がないから、これを理由としてした被告らに対する本件各懲戒解雇は違法であると主張して、その無効の確認を求めるとともに、原告に対し、本件各懲戒解雇以降の賃金の支払を求めるもの(反訴事件)からなる事案である。
一 争いのない事実等
1 原告は、肩書地に本店を置き、繊維製品等の輸出入貿易、国内販売業務、仲介業等を目的とする株式会社である。
2(一) 被告関は、昭和四五年九月一日原告に雇用された労働者である。なお、被告関は、もと中国国籍を有していたが、昭和五二年一月二八日日本国に帰化している(帰化前氏名 曾浩生 TSENG HAO SHENG)(書証略)。
(二) 被告中井は、平成三年四月一日原告に雇用された労働者である。なお、被告中井は、もと中国国籍を有していたが、平成九年五月二九日日本国に帰化している(帰化前氏名 鐘憬 ZHONG JING)(書証略)。
3(一) 被告関は、昭和六〇年から平成九年一一月二五日まで原告の業務部長の地位にあって、香港及び中国の企業から原告が繊維製品を輸入するに当たり、これら企業と売買取引の交渉をし、売買契約を締結することを内容とする業務に従事していたが、同被告が担当していた香港の取引企業の中には東寶來織造廠有限公司(以下「東寶來」という)が含まれている。
(二) 原告の東寶來間との売買取引の正規のプロセスは、<1> 原告は、東寶來との取引商品であるセーターの型ごとに、東寶來から見積価格の提示を受ける、<2> 原告は、提示を受けた見積価格を基礎として東寶來と契約価格の交渉を行って、契約価格を見積価格又はそれ以下の金額に決定し、これにより東寶來との売買契約を締結する、というものである。
4 被告中井は、原告の業務部に所属し、平成九年一一月二五日まで、香港及び中国の企業から繊維製品を輸入して国内で販売する業務に従事していたところ、同被告が担当していた香港の取引企業の中には東寶來が含まれている。
5 原告の就業規則八章には、次の定めがある(証拠略)。
四一条
社員が四三条及び四四条に掲げる行為をしたときは、本章の定めにより懲戒を行う。ただし、反則が軽微であるか又は改悛の情が明らかに認められる等、特に情状酌量の余地があるときは、懲戒を免じ訓戒にとどめることがある。懲戒は、原則としてこれを公示する。
四二条
懲戒は譴責・減給・出勤停止及び懲戒解雇の四種とし、原則として辞令を交付して次によりこれを行う。
一号 譴責は、始末書をとり将来を戒める。
二号 減給は、一回について平均賃金一日分以内を減給する。ただし、総額において当該支払期の総収入の十分の一を超えることはない。
三号 出勤停止は、十日以内を限って出勤を停止し、その間の給与を支給しない。
四号 懲戒解雇は、予告期間を設けないで即時解雇する。
四四条
次の各号の一つに該当するときは、懲戒解雇に処する。ただし、情状により出勤停止又は減給にとどめることがある。
七号 業務に関し私利を図り又は不当に金品その他のものの授受をしたとき。
八号 故意又は重大な過失により会社に損害を与え又は会社の信用を傷つけたとき。
6 原告は、平成九年一二月四日、被告らそれぞれにつき、同日付けの書面で、就業規則四一条、四四条七号、八号に基づき懲戒解雇に付する旨の意思表示(本件各懲戒解雇)をした。なお、原告は、本件各懲戒解雇を行うに当たり、その事由につき、所轄労働基準監督署長の認定を受けていない。
7 被告らは、原告から、被告関においては月額五二万八〇〇〇円の、被告中井においては月額二一万七〇〇〇円の、それぞれ基本給の支給を受けていたが、本件各懲戒解雇の日である平成九年一二月五日以降、いずれも右支給を受けていない。
二 主な争点
1 原告主張の不正行為の有無
2 本件各懲戒解雇の適否
3 被告らの損害賠償責任の有無及び損害賠償額の算定
三 双方の主張の骨子
1 原告
(一) 被告関は、平成五年の終わりか平成六年初めころ、香港に東寶來を訪れ、その代表者である林偉興(以下「林」という)に対し、東寶來から被告関へのコミッションの支払を要求した。被告関は、当初、林から右支払を拒否されたが、最終的に、次のとおり、原告と東寶來間の契約価格を東寶來の見積価格よりもコミッションの分だけ水増しする方法を採ることによって東寶來にコミッション用の資金を取得させることで林と合意し、林に要求を受け容れさせた。
すなわち、被告関が、東寶來から取引商品の見積書を受領した後、見積価格についてコミッション相当分を上乗せする形で金額の水増しをした金額リストを作成して東寶來に送付し、東寶來をして右金額リストに従った請求書を原告に送付させて原告から右金額(代金額)を東寶來に支払わせ、その後、当初の見積書の合計金額(見積総額)と金額リスト(請求書)の合計金額(契約総額)との差額(総差額)を、別途、東寶來からコミッションとして受領するというものである。
(二) 被告関は、このような方法で、判明しただけでも、平成七年七月ころから平成八年一月ころまでの間、東寶來をして原告の負担においてコミッションを支払わせることによって、原告に右コミッションの合計額相当の損害を与えたが、右コミッションの支払に係る各取引商品(セーター)の型番号、見積価格、契約価格、発送数、見積総額(見積価格総額)、契約総額(契約価格総額)、総差額(見積総額から契約総額を差し引いた差額)は、別表記載の各該当欄のとおりである。
これによれば、見積総額、契約総額及び総差額の合計額は、それぞれ、四一万八五九六米ドル、四六万七〇九一・五五米ドル、四万八四九五・五五米ドルであるから、総差額四万八四九五・五五米ドル相当額が、東寶來にコミッションを支払わせることによって原告が受けた損害(損害の一部)に当たる。
(三) 被告中井は、被告関と互いに意思を通じて、香港において、東寶來から被告関に支払われるコミッションを実際に受領する行為に従事したものである。
(四)(1) 以上の次第で、被告関は、原告と東寶來との間で締結された取引商品の売買契約(米ドル建てによる)に関する交渉において、原告の従業員として原告にとって少しでも有利な条件で契約を締結すべく交渉しなければならない義務を負っていたにもかかわらず、右義務に違背して、東寶來との間で、判明しているだけでも、平成七年七月ころから平成八年一月ころにかけて、別表記載のとおり、契約価格を見積価格にコミッション相当額を上乗せした金額に増額させることによって自己に対して右総差額四万八四九五・五五米ドルのコミッションを支払わせる一方、原告をして右経緯によって定められた契約価格が相当なものであると誤信させて、東寶來との間で右契約価格による売買契約を締結させて右契約価格相当額を東寶來へ支払わせ、もって、原告に対し、少なくとも、右総差額である四万八四九五・五五米ドルの損害を被らせ、被告中井も、原告の従業員としての義務に違背し、被告関と互いに意思を通じて、被告関の右行為に協力したものである。
(2) したがって、被告らは、債務不履行又は不法行為に基づき、原告に対して、少なくとも、右総差額相当額である四万八四九五・五五米ドルの損害賠償義務を連帯して負うものというべきであるが、百歩譲って、被告らが林の「裏金」作りに協力したに過ぎないとしても、東寶來側で契約価格からコミッション相当額を差し引いた金額で採算が合うのであれば、当該金額を実際の契約価格とすることができたはずであるから、被告らの原告に対する前同額の損害賠償責任が否定されることにはならない。
(3) よって、原告は、被告らに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償として、右四万八四九五・五五米ドルの外国為替相場による円換算額である六二〇万円の連帯支払を求める(内金請求)。
(五) 被告らの前記(四)(1)の各行為は、就業規則四四条七号、八号に該当する不正行為であるから、原告は、同規則四一条に基づき被告らを懲戒解雇に付したものであって、本件各懲戒解雇は適法である。
(六) 原告は、本件各懲戒解雇を行うに当たり、その事由につき、所轄労働基準監督署長の認定を受けていないが、右認定の有無は本件各懲戒解雇の効力に影響を与えるものではない。ちなみに、原告は、本件各懲戒解雇に先立って、平成九年一一月二八日三田労働基準監督署長に対して解雇予告除外認定を求めたのであるが、担当官から、解雇事由が国際的な事項であってその認定のために同署において多額の費用がかかることを理由として認定申請の取下げを促されたため、今後の同署との関係に配慮して右申請を取り下げたものである。
(七) なお、仮に、被告らが主張するようにコミッションを受領した事実がなかったとしても、原告がコミッション受領を示す裏付け資料が存在することを告げて被告関に事情を説明するように求めたのに対し、被告関は資料を開示しない限り一切説明はできない旨のかたくなな態度で説明を拒み、被告中井も、被告関から東寶來とのやりとりについて聞いていたのであるから、少なくとも本件が原告に発覚した時点で原告に事情を報告する義務があったのに、これをしなかったものである。原告は、被告らのこのような合理性を欠く対応をも考慮して違法なコミッションの受領の事実があったものと判断し、本件各懲戒解雇をしたものであるから、いずれにしても、本件各懲戒解雇は適法である。
(八) さらに、被告らは、本件各懲戒解雇後まもなく株式会社ワイ・シー・エスを設立した上その役員に就任して稼働し、利益を上げているのであるから、仮に反訴請求が認められる場合には、被告らの得た右利益は中間収入として控除されるべきである。
2 被告ら
(一) 東寶來の経理担当者は林の妻であったが、平成六年一〇月ころ、被告関が香港に東寶來を訪ねたところ、東寶來の実質的なオーナーである林から「妻に知られない自分に自由になるお金を作りたい」、「契約価格のうち一部の金額をコミッションとして君に支払ったようにして、妻から金を引き出したいので、協力してくれないか」と持ちかけられた。被告関は、民間企業が第三者にコミッション等を支払うことも、香港では贈賄として厳罰に処せられることもあって、いったんは右申入れを断ったが、林はその後も執ように協力を求めてきたので、原告の当時の代表取締役である黄田英豪(故人)に相談したところ、取引上のメリットがあれば便宜を図ってやってもよいのではないかとのアドバイスを受けた。そこで、被告関は、実際にコミッションを受け取ることは全くないこともあって、林に協力することとした。
(二) そこで、林は、被告関に対し、各商品の船積みの前に電話又はファックスをしてきて、契約価格を下回る価格を言い、その額をコミッションとして被告関に支払うようにファックスを入れてくれとの指示をし、被告関は、これに応じて、その都度指示どおりの文書をファックスにより東寶來に送信した。その際、林が、東寶來からコミッションの資金を引き出す時期を決めたいので、被告らが香港に行く時期をも記載するようにと指示したので、被告関は、言われるままにこれを記載した文書をファックスにより送信した。
右のようなファックスのやりとりは、平成七年一〇月ころから約一年間続いたが、その間、東寶來の原告に対する応対は良好となり、それまでルーズであった納期が守られ、良質な商品が増え、原告の売上高も増加したものである。
(三) (書証略)は、前記(二)のようにして、林の指示により被告関がファックスにより東寶來に送信したものであるが、林が、原告会社又は自宅にいた被告関に対して電話又はファックスをしてきて、これら文書をファックスにより送信するよう頼んだので、たまたま被告関の自宅から送信したものに過ぎない。これら文書のすべては、林が電話又はファックスで記載方法を指示し、被告関がワープロで打ち直して発信したものである。
(四) また、被告中井は、このような「裏金」工作に巻き込まれたものに過ぎず、コミッションの受領につき、被告関と意思を通じた事実はない。
(五) 以上のとおりであるから、本件各懲戒解雇は、就業規則四四条七号又は八号のいずれに該当する事実もないのにした違法なものであるから、無効であることが明らかである。加えて、原告は、被告らに何ら告知、弁解、防御の機会を与えないまま、同年一二月四日本件各懲戒解雇をしたものであるから、本件各懲戒解雇は手続的にも違法であり、この点からも本件各懲戒解雇は無効である。
第三当裁判所の判断
一 争点1(原告主張の不正行為の有無)について
1 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、
(1) 被告関は、平成五年の終わりか平成六年初めころ、香港を訪れて、原告の輸入取引先である東寶來の代表者である林に対し、原告との商品売買に関して東寶來から同被告個人へのコミッションの支払をするよう要求したこと、(2) 被告関は、当初林に右要求に応じてもらえなかったが、現地の他の取引先はみなコミッションの支払をしている旨告げて説得し、最終的には、林に対して右要求に応ずることを承諾させ、その結果、同時期ころ、被告関と林との間で、原告・東寶來間の契約価格を東寶來の見積価格よりもコミッションの分だけ増額し、右契約価格相当額を原告に支払わせることによって東寶來がコミッション用の資金を捻出してこれを被告関に支払うことを内容とする合意ができたこと、(3) 右合意による具体的なコミッションの支払方法は、被告関が東寶來から原告との取引商品の見積書を受領した後、見積価格にコミッション相当分を上乗せして算出した調整金額のリストを手書き又はワープロで作成して、右文書を同被告の自宅からファックスによって東寶來に送付し、これによって、原告と東寶來間で右調整金額を契約価格とする売買契約を締結させた上、原告から右契約価格に相当する金額を東寶來に支払わせ、その後、当初の見積価格と契約価格(調整金額)との差額を、別途、被告関が東寶來から受領するというものであったこと、(4) 被告関は、以上の方法によって、平成七年七月ころから平成八年一月ころまでの間、東寶來から、原告、東寶來間の商品取引に関してコミッションの支払を受けたが、右コミッションの支払に係る東寶來と原告との間の売買取引に関する商品(セーター)の型番号、見積価格、契約価格、発送数、見積総額(見積価格総額)、契約総額(契約価格総額)、総差額(見積総額から契約総額を差し引いた差額)は、別表記載の各該当欄のとおりで、総差額四万八四九五・五五米ドルが被告関へのコミッションの支払にあてられたものであること、(5) 東寶來から被告関に支払われるコミッションの授受はすべて香港で行われたところ、右コミッションの受領は、被告関自身のほか、被告中井がこれに従事したこと、(6) 被告中井は業務部における被告関の部下であるところ、東寶來と原告の売買取引のすべてを被告中井が担当していたわけではないのに、前記コミッションの支払に係る東寶來と原告との間の売買取引は、すべて被告中井の担当のものに限られていること、(7) 被告関は、本件各解雇後まもない時期である平成一〇年四月、繊維関係の輸入事業を営む株式会社ワイ・シー・エスの代表取締役に就任したが、被告中井も同時期ころその取締役に就任するなど、本件各解雇後も被告関と行動を共にしていること、以上の事実が認められる。
被告らは、被告関が、林から妻に知られない自分に自由になる資金を作る工作に協力することを求められ、林から指示されるままにファックスによって文書(書証略)を送付したもので、実際にコミッションを受領したことはないし、右工作に協力したのは原告の当時の代表取締役にも相談した上でのことであるなどと主張するが、(書証略)及び被告ら本人の各供述中の右主張に沿う部分は、(書証略)及び証人綾部勝一の証言に対比して、すべて採用することができず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。
2 以上の認定事実によれば、被告関は、東寶來から原告の負担において四万八四九五・五五米ドルの個人的なコミッションを受領し、原告をして右同額の損害を被らせたものであることが認められるところ、前記事実(特に、(5)ないし(7)の事実)に証拠(略)を合わせると、被告中井も、被告関と互いに意思を通じて、被告関の右行為に協力したものと推認することができる。そして、被告らは、いずれも、原告との雇用契約に基づき、原告の不利益にならないよう、誠実に業務を遂行すべき従業員としての義務を負っていたものというべきであるから、被告らの前記各行為は、原告の従業員としての右義務に著しく違背するものであることが明らかである。
二 争点2(本件各懲戒解雇の適否)について
前記一の判示の次第であるから、被告らについては、原告の就業規則四四条七号、八号に該当する事由があるものといわざるを得ず、そうすると、同規則四一条に基づいてされた本件各懲戒解雇は適法というべきである。なお、原告が本件各懲戒解雇の事由につき所轄労働基準監督署長の認定を受けていないことは、その効力に影響を与えるものでないことは明らかであるし、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各懲戒解雇をするに当たり、入手した資料を被告らに見せることなく、被告らに対してコミッションの受領の有無の事実を聴取したにとどまることが認められるが、このような事実があるからといって、本件各懲戒解雇が違法となるものではなく、その他、本件各懲戒解雇について、それが手続的に違法となるような事実を認めるに足りる証拠はない。
三 争点3(被告らの損害賠償責任の有無及び損害賠償額の算定)について
前記一2の判示によれば、被告らは、債務不履行に基づき、連帯して、四万八四九五・五五米ドル相当の損害賠償義務を負うものというべきであるが、本件口頭弁論終結時である平成一一年七月二一日当時の外国為替相場が一米ドル当たり一二〇・五〇円であることは裁判所に顕著であるから、これによって換算すると、被告らは、原告に対し、連帯して五八四万三七一三円の損害賠償義務を負うことが明らかである。そうすると、原告の本訴請求は、被告らに対し、各自五八四万三七一三円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成一〇年五月二一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告のその余の本訴請求及び被告らの反訴請求はいずれも理由がないこととなる。
四 よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 福岡右武)
別紙(略)